飼育方法
入手
購入
私が販売を確認したことがあるのは現時点で、2つのショップだけです。
採集や入手の難しさから、やはり高額です。4万円以上かかることがほとんどです。もっと安く買いたい場合は、オークションサイトなどで個人の方が出品するのを待つしかないかもしれませんね。
(私のショップでも販売はしたいと考えていますが、現時点ではワーカー数や副女王数が少ないので、なかなか・・・笑)
採集
数が多いに越したことはありませんが、職蟻100匹くらいを目標に採集すると良いかと思います。飼育しているうちに副生殖虫が出てくるので、コロニーを発見できれば、ある意味ではアリの採集より楽なのではないでしょうか。
アリのように女王を狙う必要はありません。というより、基本的にシロアリの創始虫を捕まえるのは困難です。
また、上記したように硬めの倒木に営巣している場合が多いので、スコップやドライバーが必須です。
上記した群飛時期を狙ってみるのも面白いですね。あらかじめ生息場所を把握したり、運がなければ難しいかもしれませんが・・・。
なお、生息地域には「特別保護地区」や採集禁止場所が多数ありますので、その区域内に入らないように採集を行いましょう。
セッティング
飼育ケースは?
湿度が保てるケースならなんでもいいと思います。ただ、タッパーなど、柔らかい部分があるケースを使用すると確実に穴を開けて脱走されますのでご注意ください。
私の場合は、プラスチックケースや虫かごで飼育しています。
餌は?
一般的にシロアリ飼育に使用されている、餌を3つほどご紹介します。
1.産卵木とクヌギマット
個人的なオススメは、クワガタムシ用に販売されている産卵木です。ホームセンター等で売っているもので十分、というかベストです。安価かつ安全に飼育可能です。観察などの目的がなければこれを使いましょう。
20分ほど水に浸してから使用します。
その後、ケースに湿らせたマットを敷いて下のようにセットすれば完成です。
一般的なクワガタの産卵セットと同じ感じですね。
セット直後は、産卵木に菌が発生することがありますが、時間が経つと消えてなくなりますのでご安心ください。(シロアリの抗菌物質による効果なのかはわかりません)
レイシ材などの菌糸が回りすぎている材はオススメできません。シロアリの餌となる成分が菌によって分解されている可能性があるからです。また、シロアリ自体が菌に巻かれる可能性もあります。(試したわけではないですが、念のため…)
観察メインであれば以下のようなセットもいいかもしれません。
プラスチックケースにクヌギマットを詰めただけの簡単なものです。
クヌギマットの上にプラ板を置くと、その下で生活するようになるので、観察しやすくてオススメです。
※このようなケースにする場合は、プラ板の上はシロアリが滑りますので、観察時以外は木の板などを置いておきましょう。
2.建築用・ホビー用木材
ホームセンターで購入できる木材も餌として使用できます。
特にバルサ材やアカマツ材は柔らかいためシロアリが食べやすく、多くのホームセンターで売っているのを見かけるのでオススメです。
種類によって、好む木材は変わると思いますので、あくまで参考程度にお考えください。いろいろ試してみるのも面白いかもしれませんね。(試す際は、飼育ケースに木材を直接投入するのではなく、コロニーから数匹を取り出して、別ケースで試験することをオススメします。)
このような加工木材を使う場合、大きさにもよりますが水に3〜5時間ほど浸けましょう。乾燥も比較的早いので、随時給水も忘れずに。
他にもオススメの材などがあれば教えて頂けると幸いです。
※防虫剤などが塗布・処理されている材は使用しないでください。
3.ティッシュペーパー
ティッシュペーパーやダンボールを濡らした物でも飼育可能です。
シロアリ飼育に頻繁に使われるものではありますが、人工的な成分も含まれていますので、あえてオススメはしません。
とはいえ安価さや手軽さではダントツなので、飼育に特別なこだわりがなければ使ってもいいと思います。(半年以上ティッシュだけで飼育しているグループがいるので問題はないと思います)
注意事項
ケースの大きさや餌の種類にもよりますが、月1度かそれ以上の湿度確認を行って下さい。丈夫とはいえ、水分がないと死んでしまいます。(密閉に近い状態であれば、確認頻度はもっと少なくても良いでしょう)
また、シロアリの数にもよりますが、2〜3ヶ月に一度は餌材が不足していないか確認するようにしましょう。数が多くて中がみえないと、思ったよりも材がスカスカになっている可能性がありますので、注意して下さい。
自然下の朽木を餌に使用する場合は、中に潜んでいる肉食の節足動物類にご注意ください。オオシロアリと言えど、存在的には生態系カースト下層の生き物なので普通に食べられます。
甲虫の幼虫に食べられるオオシロアリ(閲覧注意)
レンチンや熱湯処理をしてから、使用してください。
これは関係があるかわかりませんが、私の保有するコロニーでは観察するたびに共喰いが発生しているのです。シロアリは死んでしまった個体を食べることはありますが、こんなに頻発するものなのでしょうか。なにか病気的なものがあるのでしょうか?
共喰いの写真(閲覧注意)
今後の観察で明らかにできれば良いと思っています。
温度は?
国内生息北限である愛媛県は10℃以下になることもある地域ですので、目安としては10℃〜25℃ほどであれば安全に飼育できると思われます。基本的には涼しい森林内に生息していますので、温度が高すぎると問題が発生するかもしれません。
副生殖虫出現まで
初めから生殖虫がいない場合、擬職蟻が生殖虫に分化するまで、約40日〜60日ほどかかります。
そこから卵巣の発達や交尾までに時間がかかるので、産卵はもう少し先だと考え、3ヶ月ほどを見積もりましょう。
卵は1ヶ月ほどで孵化し、次世代の職蟻が生まれてくると思います。
実際に、生殖虫不在の状態で飼育を始めてから4ヶ月ほどではじめて幼虫を確認できました。
どれくらいで老齢になるかは、今後の観察で調べていきたいです。
コロニーの増やし方
オオシロアリでは、副生殖虫が異性の擬職蟻の生殖虫分化を促進し、逆に同性の生殖虫分化は抑制するということが知られています。
言い換えると、オス副生殖虫はメスの擬職蟻を二次女王に分化させると同時に、新たな二次王の分化を遅らせてしまうのです。逆もまた然りです。
副生殖ペアがいると、さらなる副生殖虫の出現が長引いてしまうということですね。
つまり理論上は、副生殖虫が1ペア揃った時点でそのオスとメスを分断し、コロニーを2つに分けることができればそれぞれのグループから比較的早く異性の副生殖虫が分化誘導されるので、効率よくコロニーを増やすことができるということです。
さらに、2020年にオオシロアリについての以下の論文が発表されました。
「オス副生殖虫によるメス副生殖虫分化誘導は、逆のそれよりも早い」
「Male neotenic reproductives accelerate additional differentiation of female reproductives by lowering JH titer in termites」Scientific Reports(Kohei Oguchi et al.、2020)
というものです。
上記のようにコロニーを二つに分けた場合は副王がいるコロニーの方が早く副女王が出現するということになります。
非常に面白く、興味深い研究ですね。
いずれにせよ職蟻数が多くないとできそうもありませんが、いずれ試してみたいです。
最後に
オオシロアリの飼育方法はいかがだったでしょうか?
入手することが難しく、なかなか飼育する機会がないかもしれませんが、興味がある方のお役に立てれば幸いです。
また、ここに記したのは、オオシロアリの飼育に役立ちそうな情報を簡単にまとめたものです。
もし最後の方の内容が分かりにくかったらすみません笑
オオシロアリの飼育方法と書いてますが、他のシロアリ(ヤマトシロアリやイエシロアリなど)も同じ飼い方ができると思いますので、ぜひ飼育してみてください!
参考
- 「Termites (Isoptera): their phylogeny, classification, and rise to ecological」
- 「奄美大島におけるオオシ口アリ Hodotermopsis japonica Holmgren 有麹虫の記録」
- agreeable(vol.45)
- 「Male neotenic reproductives accelerate additional differentiation of female reproductives by lowering JH titer in termites」
- シロアリ-女王様、その手がありましたか
- シロアリの事典
コメント