「シロアリを飼育しています」
そんなことを言ったら、世間では冷い目で見られるのかもしれません。
・・・ですが、それでも飼育するに値するシロアリがいます。
そう、オオシロアリです。(もちろん他のシロアリも魅力的です)
シロアリがここまで大きくていいのか、と思えるほどの圧倒的なスケール。
可愛らしいつぶらな瞳。
社会性昆虫好きなら、一度は飼育してみたいと思うのは当然のことでしょう。
そんな方のために、書籍や論文、私の飼育・採集経験などを踏まえ、飼育方法をまとめてみました!
基本情報
(飼育情報を知りたい方は読み飛ばして2ページ目へ!)
分類
オオシロアリHodotermopsis sjostedtiは、ダイオウシロアリ科オオシロアリ属に属するシロアリです。
シロアリの「科」は便宜的に、腸内に細菌を持たない高等シロアリ、腸内細菌を持つ下等シロアリに分かれています。
ダイオウシロアリ科のオオシロアリは腸内細菌を持っているので、下等シロアリということですね。
湿った木材を好む「湿材シロアリ」でもあります。
また、中国名は「山林原白蚁(蟻)」です。検索の参考までに。
分布と生息環境
日本国内では屋久島、奄美大島、大隅半島南端、高知県足摺岬、愛媛県愛南町に分布しています。国外では中国、台湾、ベトナムにも分布しているようです。
生息環境は湿度が高い森林内の倒木〜土中に営巣しています。
私の経験ですが、硬く、腐敗が進んでいないように思える針葉樹(スギやマツなど)に好んで営巣している印象です。数回しか発見したことはありませんが、全て上記したような木材から発見できました。(そのため、割り出しが非常に困難です)
基本的にシロアリは柔らかい木材を好むとされていますが、何か理由があるのでしょうか?それとも偶然でしょうか?
生態
オオシロアリは観察や飼育が容易なことから、シロアリ研究では頻繁に使われるので比較的生態が調べられています。
カースト
アリと同様に、真社会性昆虫であるシロアリは個体によって異なる行動を示す、「分業」を行います。
最も特徴的な分業は、産卵を行う生殖階級と、産卵を行わない非生殖階級に分かれていることですね。
ここではオオシロアリのそれぞれのカーストについて簡単にご説明します。
生殖階級
創始生殖虫(一次生殖虫)
体長12~13mmほど。群飛を経験してペアになり、コロニーを1から創り上げた生殖虫のことを指します。
アリとは異なり、交尾後もオス(王)が生存し、夫婦でコロニーづくりを行います。
オオシロアリの創始生殖虫は巣内の他の個体と違い、体色が褐色〜赤みを帯びているのですぐに判別が付きます。
副生殖虫(二次生殖虫/補充生殖虫/置換生殖虫)
なんらかの理由で、生殖虫を失ってしまった場合に、代わりに繁殖を行うために出現する階級です。
非生殖階級
職蟻
コロニーのほとんどが職蟻で構成されており、巣内の作業のほとんどを担っています。 卵・若齢幼虫の世話、採餌、巣作り、栄養交換などですね。老齢で10〜14mmほどの大きさになります。
また、オオシロアリでは、すべての職蟻が潜在的な繁殖能力を持ちます。巣内に生殖虫がすでにいる場合、老齢職蟻はワーカーとして働きますが、何らかの理由で生殖虫がいなくなると、自身が脱皮して副生殖虫になります。このことから、擬職蟻(オオシロアリでは7齢職蟻のこと)とも呼ばれています。
生殖虫が充分にいる場合は擬職蟻から擬職蟻への脱皮、静止脱皮を行います。
兵蟻
その名の通り、巣の防衛に特化した個体のことです。
コロニー内で最も大きく、大きさは20mmにも達し、日本最大級のアリであるクロオオアリの女王よりも大きいです。
この大きさは、非生殖階級のものとしては国内のみならず世界でもトップレベルです。
日本にこのようなシロアリがいるのは非常に嬉しいですね。
また、攻撃性がかなり高く、オオシロアリレベルの大きさともなると、噛まれると血が出る程度には怪我をするのでご注意ください。
壁に頭を打ち付けて、威嚇と同時に仲間への危険を知らせる「タッピング行動」もよく観察できます。職蟻もタッピングは行いますが、兵蟻は力が強いのでその分音も大きいです。刺激を与えると「カカッ、カカッ」と、はっきり聞こえます。
なお、自身で採餌することができないので、仲間からの栄養交換がなければ死んでしまいます。
兵隊一歩手前の「前兵蟻」もいますが、写真がないので撮影できたら追加します。
ニンフ
成虫の前の段階のことで、基本的にはいずれ有翅虫になる個体です。背中から翅芽が生えていることが特徴ですが、オオシロアリでは仲間にこの翅芽がかじり取られてしまうこともあるようです。
また、自身が擬職蟻に戻る退行脱皮という特殊な脱皮を行うことがあります。
家屋被害
オオシロアリでは家屋被害がほとんど無いようです。私が調べた限りでも記事はほとんど見つかりませんでした。
群飛
奄美大島では7月下旬〜8月上旬に発生します。
次のページから詳細な飼育方法です。
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